巨大な針は絶え間なく時を刻み続ける。
全ての人が 時と言う名の束縛を受けているのを表すかのように、
全ての人を急かすかのように。
この街の象徴である巨大な時計塔。
今日もまた、Lv上げに向かう人々が大量に訪れる。
私もその一人だ。
アルデバランという、プレイヤーにとっては辺境の地を訪れる目的は、
ほとんど全ての人が、この時計塔であろう。
地上4階層、地下4階層の複雑な構造を持つこのダンジョンは、どの階でも効率よく経験値を稼げる。
故に様々な職、様々なLvのキャラが各階にひしめき、ひたすらに経験値を積み上げていく。
「っもう!目の前でハエ飛びするなんて!」
不満をそのまま口にしながら、倉庫のアイテムを取り出す。
キャラが戦闘不能になると。経験値が1%減少する。
効率を求める人々はそれをも嫌がって、危険になると戦線離脱を図る。
目の前でワープやハエ飛びなんてよくあることだ。
そこに人が居るなんてどうでもいい。
自分の身が無事ならそれでいいのだ。
「うー・・・。あと6%だったのに・・・」
普段はいくらハエ飛びされようが、ある程度なら瞬時に対応、始末できる自信がある。
しかし。
この粗悪管理と脆弱極まりないサーバが、ときおりこちらの自由を奪う。
こちらの行動の機会を奪い、こちらの時間を止めたような状態になる。
いわゆるラグというのが襲ってくるのだ。
ここで憤慨しているウィザードの女性は、魔法が放てずに、アルデバランの街中に舞い戻ったところというわけだ。
ウィザードのHPなんてほとんど無いようなもの。一度捕まれば一瞬だ。
復活地点に多くのキャラが群がっている。
基本的に、ハイリスクハイリターンな場所なので、ここに人が絶える事はないと言ってもいい。
それに、プリーストのサンク待ちでさらに人は増える増える。
酷いのに至っては、その場で延々と座り込む始末。
そこらを飛び回る鷹が鬱陶しい。
と、地面に待望の魔法陣が現れる。
サンクが発動すると、多くのキャラにかかるときに処理落ちを起こす。
別に敵が居るわけでもないので、害は別に無い。
回復目当てに群がってくる無作法なのが嫌いなだけだ。一言の礼すらを口にすることがないから。
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