そっと、手をかざすと
茨に包まれた、大きな十字架が彼の手に現れる。






朱い血がこの雪を汚すだろうけど
降頻る白が、包み込んでくれるだろう。


神様が居ないのなら。
祈りは、何処にとどくかな・・・。
もしかしたら、祈りを聞いて欲しい人に、届くのかもしれない。
そんな都合のいいことが、ふと思い浮かぶ。
ねぇ
今の私でも、幸せを祈ることくらいは許してくれますか?


私の言葉はもう紡がれないけど
あなたに響いた私の声はなかったけど
せめて、この祈りだけでも、きいてください。







乾いた音が、ひとつの終わりを告げる。


私の記憶を貫いて。

でも、その音は響くことなく、降頻る雪に溶けていく。











私の紡いだ、最後の言葉も。




前へ      -Fin-