「ちょっと、入れちゃまずいものを入れたみたいで、爆発しちゃいまして・・・」
「ば・・・爆発って、いくら爆弾でも作ってたの?」
「普通のポーションを作るときに、ちょっと色々混ぜてみただけですよ」
「色々・・・って?」
「雲のかけらを入れたんですがー・・・」
「雲のかけらって・・・そんなの、錬金術の材料にあった?」
知り合いのアルケミストが作っているところを何度も見ているし、時々は材料を提供しているので、
それなりに材料は知っているつもりだ。
雲のかけらなんて、材料に無かったと思うけど。
「あぁ、新しいアイテムの実験をしてたのですよ」
「新しいアイテム?」
「ええ、ポーションを広い範囲に使えれば役に立つなぁと思いまして、霧みたいになるようにって」
「ふぅん」
興味薄な反応をしているように見えたらしく、アルケミストは少し不満げな顔をしていた。
「ごめん、話を聞いてないわけじゃないんだけど」
「まぁ、魔法職の方は、あまりポーションを使いませんしね」
にこっとこちらに笑みを返して、なにかに気づいたような、ぱっとした顔つきになる。
「ちょっと調合材料と比率を変えてみた青ポーションがあるんですよ、よければ試してみません?
効果も普通のより、けっこう上がってるんですよ」
「へぇ、凄いじゃない」
そうSPが切れることもないが、もらって損をするものでもないし、役立つこともあるだろう。
有難く受け取ることにした。
「それじゃ、頂こうかな」
その言葉を聞いたのが嬉しそうな様子で、彼女は戸棚の方へ走っていった。
なんだか、泣いたり笑ったり、しかも初対面の人間に青ポーションをあげようとしたり、変な人だ。

ガラスのはめられた扉を開くと、上から3番目の棚に手を掛ける。目的のものは奥のほうにあるらしく、手前の瓶を左右に押しのけていた。
体ごと突っ込んで手のひら大の瓶を取り出すと、急ぎ足でこちらに戻ってきて、私の手をにぎり、手のひらの上に液体の入った瓶を手渡す。
「はい、どうぞ。」
・・・。
前言撤回。
今、私の手のひらの上にある瓶の中身は、青と呼ぶには多少無理のある色合いのものが封入されていた。
何と言うか・・・、少し譲った言い方でも赤黒い紫色?
瓶のラベルには可愛い字で『青ポーションE』と書いてあるが、最早『青』と呼ぶには相応しくない。
この色を見るうちに、ついさっき部屋に入ったときのことを思い出した。
よく考えれば失敗前科あり、しかも爆発まで引き起こしているんだった・・・。
いったんまばたきをして、そうそう失敗するものでもないだろうと考え直し、少し手にとって試してみようとふたを開けてちょっと傾けた。
・・・どろりとしている。一昼夜じっくり煮込んだシチューのような感じの液体が。
全速力で不安の感情が私の中に戻ってきて、外に出る前にふたをし直させた。
承諾してすぐで何だが、これを使うのは遠慮願いたくなった。
知らず知らずのうちに眉根を寄せていたようで、私の視線に割り込んできて、必死になって彼女が弁解した。
「大丈夫です!見た目はちょっと・・・あんまりよくないですけどちゃんと自分で試してますから!
効果については絶対保証です!ええ!」
「試したんだ・・・」
驚いた顔とあっけに取られた顔の中間みたいな顔で、彼女を見つめる。
まぁ、害がなさそうなのは保証されたけど・・・。
これを自分で試したんだ・・・。
自分で作ったとはいえ、チャレンジャーだなぁ。

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