散らばっているガラスの破片をほうきで掃き集めて、隅っこのごみ箱に流し込む。
「すいません、手伝って頂いて」
「別に構わないよ」
ほうきを操りながら視線は向けず、言葉だけで返事を返す。
なんとなく成り行きで手伝うことに
石畳の床に散らばった破片を掃き集めながら、不思議なことに気付いた。
魔物が現れる気配が全く無い。
それどころか、ここだけ空気が違うような気がする。
あの煙のせいでというものではない。肌に触れる空気の感じに、何か少し違和感がある。
小川のせせらぐ森林の中で感じるものの中から、涼しさを切り取ってここに持ってきたような感じ。
そもそもMAPにも載っていないし、ここは何処なんだろう。
この部屋の雰囲気から、時計塔であることは間違いないと思うのだが・・・。
「そういえば、この部屋は一体?」
部屋の主であろうアルケミストに聞いてみる。
「うーん」
彼女はすこしうつむいて、考えを巡らせているようだ。
というか今まで気にしなかったのだろうか。
「多分、以前に錬金術師の方が居た部屋だと思うんですけど」
こちらを向いて口を開いた。
「事実がどうなのかはわからないですけど、
私がここに来た時は、既にだれかが暮らしてたような痕跡があったんですよね」
「ふーん・・・」
「ほこりは溜まってましたけど、ガラス器具とかの錬金術に使う道具はそのまま机の上に置いたままでしたし、
きっとここは、以前錬金術師の方が利用してたと思うんです」
「それじゃ、ここは誰かの実験室だったのかもしれないね
私がここへの道を見つけたときも、明らかに隠していたような感じだったし、
ここみたいなダンジョンなら、低Lvの人じゃ入ることは出来ないからね」
「そうですね、実験や研究に打ち込むには最適だったのかも」
「魔物が進入できないような仕掛けがされているようだしね」
改めてよく部屋を見回してみると、棚に沢山の器具が並んでいるのが目に付いた。
ほこりは微塵も無い。彼女がここに来てから、
金でめっきを施したものや、ガラスの管が何本も分かれているものなど、様々なものがある。
材料も彼女が用意したもののほかに、ラベルがはがれかけているものや、後から書き直して貼ったものが並んでいる。
見た目に高価そうなものもあり、以前にアルケミストが住んでいたとすれば、
高名だったか、資産が豊富もだったか、相当のパトロンが居たアルケミストだったのだろう。
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