「この前割っちゃって、これで許してくださいね」
どうやらサーバーを割ってしまったらしい。見てる限りそそっかしいからなぁ。
ドリッパーを揺らして粉を平らに揃えると、フラスコの上に置く。
中心にお湯をゆっくりと、少しだけ注ぐ。
軽く撫でるようにして全体にお湯を注いで、少し待つ。
「こうやって、蒸らすことで準備をさせるんです」
「おいしいコーヒーを作るのって、けっこう時間がかかるんだ」
粉が水分を吸収し、膨らんでくる。
「ほら、こうなったらそっとお湯を注ぐんです
あんまりいっぱい注がずに、粉が抱えられるくらいの量だけを」
中心からくるっと、"の"を描くようにして注いでいく。注ぐと言うよりは、乗せているような感じだ。
コーヒーの粉がつやを取り戻し、表面が泡立っていく。
「何回かに分けて注ぐんです」
「よく知ってるね」
「ええ、好きなのでなんか覚えちゃったみたいです
錬金術で覚えたことなんかも、ちょっと応用してみてるんですよ」
錬金術。好きこそものの上手なれとは言うが、部屋に入ったときの惨状とあの青ポーションを見ると、
このコーヒーも・・・、ちょっと不安になる。

お湯がサーバーに落ちきると、もう一度お湯を乗せるようにして注ぐ。
香りが湯気と供に辺りに広がり、私は何度目かのそれを楽しむ。
「そうだ。天気も良いし、折角ですから、テラスで飲みません?
よくやってるんですが、すごく気持ちいいですよ」
そう彼女が提案する。
テラスで飲むなんておしゃれな体験をするなんて、なかなかない機会だ。
快諾して、机を運び出すのを手伝う。

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