日常のことや愚痴など、とりとめのない話題をしているだけだった。
けれど、少しずつ、今まで気付かなかった欠落が満たされていくのを感じる。
何が欠けていたのかはわからないけど、それは確実に存在していて、私を縛り付けていた。

よく耳を澄ますと、鳥のさえずりが聴こえる。
あの頃と同じように世界は輝いているのかもしれない。
そうだとすれば、輝きが失われ曇っていたのは、私のほう。
まだ始めて間もないころ、まだ魔法も使えず、ナイフ片手にポリンを相手していた頃。
目にするもの。触れるもの。自分に流れ込むありとあらゆるものが新しく、楽しかった。
純粋に、世界と向き合っていた。
マジシャンに転職して、覚えたての魔法をところかまわず放っていた。
すぐにSPが尽きて逃げ回って、よく他の人に助けてもらっていた。

もう一度口に含むと、そう主張はしていないが、渋みも苦みも確かにある。
かえってそれがまろやかさを引き立てる。
なんだか、あの頃の気持ちを思い出させた。

時計は確実に時を刻み続ける。
時間というものは、生きるものすべてに平等だ。
何時であるとか、何日であるとか、何年であるとか、そんなものは人間が決めたものさしに過ぎないと思う。
時間という概念も、そうなのかもしれない。
でも、時間の流れというものは滞ることが無く、なにもかもに存在する。
時間は別に急かすつもりなんてないのだ。変わらぬ流れを保ち続けている。
私を含め、急かされているのは自分のせいなのだろう。

私の中の時間は、確実にゆるやかになっていった。

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