モロクに着き、直ぐに辺りを見回す。
倉庫を使ってたのか、間を置いてしまったが直ぐ近くに歩いていた。
つかつかと早足に歩いて近づく。

「おいアンタ」
突っかかるようように口調を荒げたふりをして、肩をつかみ、立ち止まらせる。
何事かと苛立たしく振り返って来たが、顔を確認して途端に表情を気まずげに苦くする。
罪悪感はあるらしい。
だがあえてそれを突く。
「無賃乗車はなかなかよいご趣味で」
皮肉交じりにふざけたような言い方で、それこそ意地悪く。
そうするとあっさりと、申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べてくる。
「急いでたから・・・、ごめんなさい」
「で?」
「無断で乗ったのは悪いと思ってる」
「で?」
「・・・ジェム代はお払いしますから」
「で・・・?」
「だから、謝ってるじゃん!」
人差し指を鉤型(かぎがた)に曲げ、相手のあごを乗せるようにして触れる。
「それで?」
顔を上から少し見下ろすような形になる。
Wizの視線が傾斜を駆け上がるような強さで刺さる。俺の目を今にも貫き通しそうだ。
「今ボク機嫌悪いからね、まぁ運が悪いとでも思ってくれよ」
そういって更に顔を寄せる。皮肉にかつ卑屈にニヤついてみせて。
相手はとってはさも嫌な表情に映っただろう。
目の前に来たことで、不機嫌さがとうとう敵意に変わった。
相手の右手も、杖を『握る』から『握り締める』に変わる。

いいね、こういうのも燃える。
萌えでは無いぞ。

顔を一旦引き、こちらを睨む敵の顔を確認する。
ふむ。
「さて、お代は頂きますよっと」
そう言って、軽くステップを踏み距離を詰める。
距離はほぼ無くなり、俺と相手の間に存在する空間は限りなく零となる。
肩を掴み、自分の左足を半歩前に置いて右手を相手の後頭部へと滑り込ませる。
易々とこちらの行動を成立させるつもりも、相手にあるはずが無い。
直ぐに魔法の詠唱に入ろうとする。
恐らくは凍結か精霊系の、即座に詠唱を完了されることが可能なものだ。
だが、その言葉を一つも発することなく妨害される。

前へ      次へ