別に沈黙の秘蹟を使ったわけでも、攻撃したわけでもない。
単純に。
そう単純に、
唇を押さえただけのことだ。

唇で。

「はい、ごっそさん」

Wizは茫然としていたが、事実を認識するにつれて、戸惑いと否定が湧き上がっている。
「あう・・・は・・・うああ」
言葉になりきれてないものというか、声にならない声と言うか、そんな感じのものが口からもれてきている。
真っ赤になっている。
耳まで真っ赤だ。
中途に開いた下唇が震え、頬に両手を当てて、不規則な瞬きを繰り返している。
当然杖は足元に落ちている。さっきからふらふらとしているので、爪先やかかとで蹴られて転がっている状態だ。
頬に当てた両手が、うろうろと行き場を無くすように動き、指を付き合わせて握ったり開いたり。
あーあー、可愛いネ。
ちょっと顔が綻んでしまう。
向こうはそんな俺の様子とは反する模様。
正気に戻ってきたらしく、敵意が当社比5割増くらいで復活。
顔を震わせながら、泣きそうな睨むような、尖った視線をこちらに向けている。
それを気に留めず、そのまま台詞を続ける。
「こっちも身を削って御奉仕してんの
いいっしょ?キスなんて減るもんでもな・・・」
いぅっ!?

突然視界が真っ暗になる。
脳髄が揺さぶられ、意識が一気に持っていかれる。
つまり。
横っ面に強烈なのが一撃入ったのだ。
直ぐに視界は元に戻り、景色を捉え始める。
ただし、左側の。
・・・いい一撃だ。魔道士にしとくには勿体無いぜ。

今回の報酬 [平手 1発獲得]

前へ      次へ