それはもう、戻ることのない時間。




顔はわらって、心は泣いて。
涙がかれる前に、そのうち心の泣き方も忘れて。
自分を隠すことは、もっと上手になって。

微笑いかける私に返される笑顔。
つくりものを扱うことだけうまくなる。
その度に心の形はうやむやとなり、痺れていく。

ひとりで居ることが怖くて
ひとりで居たいときもあって
ひとりはずっと慣れなくて
私は何も話さなくなった

ことばにしないと わからないのに

ことばにしたって わからないのに

まず私は、言葉(トビラ)を失った。




「貴女には失望です」
突然の言葉に、私は狼狽した。
そして絆は崩れていった。最もつよいと思っていた絆が。
「被害者ぶって、私達の前ではいい顔をして
・・・貴女の言葉に助けられたかと思うと、耳を切り落としたくなる」

突然、私は黒い部屋に押し込められて、そのまま海を流された。
その人とは、言葉を交わすことも、顔をあわせることさえ希薄になってしまった。
絶えた絆が、海の上にゆらぎほぐれては、ばらばらになり消えていった。

そして思わぬ岸にたどり着いた。

見てしまったのだ。
あれだけ優しい表情を見せる仲間が、
ありもしないことを吹き込み、私を貶めていたことを。

分かってしまったのだ。
彼女の中で、自らを湧き水とした不信と疑念が脹らみ、
錆付いて黒ずんだ私を作り上げていったことを。


次に私は、信じること(ヒトミ)を失った。




表面上、私達は殆ど以前とかわることなく、うまくいっていた。
そう思っていた。
皆が、そう取り繕っていたと気づいたのは。

私はただ、自分の感じる痛みにしか向いていなかった。

痛い
痛いよ

魔力をうまく形にできない。

「どうしたの? 調子、悪い?」
「大丈夫、だいじょーぶ・・・」
何も大丈夫じゃない。
ここに居るのも、つらい。

そして最後に、魔法(チカラ)を失った。


いや、最後に失ったのはきっと私自身の命。
魔力どころか・・・ その腕すら、感覚を失って。
出来の悪い作り物の古い枝が、肩に刺さってぶら下がっているようだった。

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