「わたしは」
私は
「・・・」
言葉に、できなかった。
この人のように、幸せな場所でずっと居たかった。
それは叶わなくて。
自分のせいだけど、そうなんだろうけど、皆を憎んでしまって。
些細な言葉ですら言う資格は、私にないように思えて。

「強く、なれてたらいいのに・・・」
代わりに出た言葉。
ほんとうに、強くなれてたらよかったのに。
そうすればきっと・・・。

やめよう。

そう思うとほぼ同時に、彼が口を開く。
私の卑屈な言い様を咎めるでもなく、私をなだめる優しい感じでもなく、
ただ、穏やかに、静かに。

「人はそんなに強くない
本当に強い人間なんてごくわずかのものだろう」

「強くないから弱さもわかるし、人を見ることが出来る」

「強く在ろうとすることができる」


「・・・強いんですね」

「そんな大層なものじゃないですよ、俺は別に強くもなんとも・・・」
そういって否定の声をあげる。

「ただ、そう」

「信じる正義を諦めて選んでるだけ・・・だ」

そのおかしな言い方に、何を含んでいるのか分からなかった。
ただ、それは諦めというよりは、寂しさに近いように聞こえた。


ただ冷たい空気だけが、ゆっくりと響いて。

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