「魔法」

「使えなく、なってしまって」
指先を眺める。
左手を、真っ白な前方に差し出す。
人差し指と中指を立て、親指を横に広げ、薬指と小指の力を抜く。
魔法を使うときの、私の癖。

差し出した指は、空を舞うだけ。

戻れたとしても、新しい居場所を見つけたとしても
どのみちお荷物にしかならない。
役立たず。

それに
新しい居場所なんて・・・ いらない。
能力を求めているわけでもなく、ただそこに居ることを受け容れてくれるところだとしても、
居場所ができても、多分私は、耐えられない。
多分私は、同じ過ちを繰り返す。
代わりが欲しいだけだったとしたら、なおさら・・・。

「誰かがそこにいることの温かさ・・・」
空気が、冷たい。
次の言葉をうまく絞り出すために、大きく呼吸する。
舌が、肺が、凍るようだ。
心はうまく、冷えただろうか。
「大切だとわかっているつもりで」

「無くしてから、本当に大切だったと、気付くんです」。

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