少しばかり、私の話を聞くことに徹していた彼が口を開く。
「無くしてから、か・・・」
プリーストは、右手を胸の前にかざし、左手で包む。
いや、包むというにはあまりにも乱暴で。
握りつぶすように、指を立てて。
「この力、傷は癒せれど心は癒せない」
そう言うと、淡い黄緑色の光が湧き起こり、辺りを包む。
傷を瞬時に癒す初等の秘蹟、ヒールだ。
数秒の輝きの後、溶けるように消えていった。
「魂を呼び戻すことも、魂を救うこともできはしない」
彼が何を言いたいかはよくわからなかった。
ただ、何かに怒りを染み出しているようで、何かに迷うようで。
手を離し力無く落として、ふぅ、と呼吸をして体を起こした。
陽光が差しているとはいえ、雪の街。
息は白く、光がぶつかってその様がよくわかった。
「無くしたものは、取り戻せない?」
少し間を置いて、そう私に問う。
取り戻す・・・。
できるなら、そうしたい。
私にとって大切な場所で、安らぐ場所。
・・・いや、今からそれを見るなれば、全ては過去形。
あの強い拒絶を、見下すような眼差しを。
私には、変えられることができると言える自信は微塵にも感じられなかった。
「大切なもの・・・、大切だったもの
取り戻せるかもしれない
でも、私には無理です」
そう言った私を見詰める彼の視線は、その様相こそ変えていないものの、
睨むような、貫き通す強い視線。
「大切だったもの・・・、自分でそうと分かっていて
取り戻す事ができるのに何故そうしない?」
可能性があるのに、何故動きもしない。
そこに十分な選択肢が残されているのに、何故最初から捨てているのか。
そんな言葉、彼は口にしていないが、視線が直接私を貫いて、その言葉が残った。
なにかできることだけで、とても幸せなことなのかもしれない。
でも、でも・・・。
「駄目・・・ なんですよ」
ほんんど、声にならなかった。
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